2007-03-22

タミフル

注意:私は医療の専門家ではありません。この記事に書いてあることは素人である私個人の意見です。判断は御自分の責任でお願いします。


タミフルとそれに伴う(かも知れない)異常行動が問題になってますね。これを受けて、厚労省は原則として十代の患者にタミフルを使用しないよう通達しました。ただし、タミフルと一連の異常行動の間に因果関係があるのかどうか、厚労省は不明だとしています。

ちょっと解り難いので、この「因果関係不明」について説明したいと思います。例えば、(a)私が照る照る坊主を作った翌日、快晴だったとします。この場合、私が照る照る坊主を作ることと晴れることの間に因果関係があると言えるでしょうか?次に、(b)私が照る照る坊主を作った翌日はいつでも、快晴だったとします。この場合私が照る照る坊主を作ることと晴れることの間に因果関係があると言えるでしょうか?
多分、(a)に対しては「ない」、(b)に関しては疑いながらも「ある」と答える人が多いんじゃないかと思います。実は、正解は両方とも「判らない」が正解です。
まず、(a)ですが、これはたまたま一回だけこういうことが起こった、というだけで、それだけで因果関係は判断できない、と考えられます。なので「判らない」が正解です。ただし、照る照る坊主にそんな機能はないと常識的に判断しているので、普通の人は「ない」と答えるでしょう。
次に(b)ですが、「いつも」なんだから、因果関係はあるんだろう、考えるかもしれません。しかし例えば、これが砂漠の話だったとしたらどうでしょう?砂漠ではほとんど雨は降りませんので、照る照る坊主を作ろうが作るまいが、ほとんど晴れです。
この(a)・(b)両方に言えることですが、因果関係を見る場合には、少なくとも、「そうでない場合」はどうなるか、と言う事を調査しなければなりません。例えば(a)の場合、「そのときは晴れたかもしれないけど、何回も照る照る坊主を作ってみたときはどうなんだ?」ということを考えねばなりませんし、(a)・(b)両方の場合で、「照る照る坊主を作らない場合はどうなんだ?」ということを観察せねばなりません。
整理の為、照る照る坊主を作る場合をP、作らない場合を~P、その翌日が晴れる場合をQ、晴れない場合を~Qとしましょう。このとき、PでかつQである確率が、~PでかつQである確率よりも明らかに高い場合、PとQの間に「因果関係がある可能性が高い」、と考え、そうでない場合は「因果関係はない可能性が高い」と考えます。「可能性」と書いたのは、実は偶然Pとは別の原因がPと同時に起こった可能性もあるからです。

さて今回のケースで厚労省は、タミフルを服用した場合(P)とそうでない場合(~P)について、異常行動の有無(Qおよび~Q)を調査し、タミフルを服用した場合とタミフルを服用しなかった場合、両方について、異常行動が起こる確率が変わらなかった、と言っています。つまり、PかつQと~PかつQについて確率が変わらない、という調査結果を得たということになります。
これを前の説明に当てはめれば、「因果関係がない可能性が高い」という結論を得ます。厚労省は、そういうことを言っているわけです。


さて、この厚労省の主張に反対の意見も提出されています。例えば、東京新聞の記事から、浜六郎医師の主張があります。でもこの主張は少しおかしいです。まず、浜医師は次のように言っています。
私がそのデータを分析した結果では、発症初日の昼には、服用した方が何倍もの異常行動を起こす計算になった。厚労省の報告書は、タミフルの影響が少なくなる二日目以降も一緒にしている。異常行動は一回目か二回目の服用から数時間以内が最も起きやすいので、そこをきちんと解析しないと意味がない。
しかしこの直後、次のようにも言っています
高熱で意識もうろうとして、むにゃむにゃと変なことを言う「熱譫妄(せんもう)」は確かにある。だが、タミフルによる異常行動は、むしろ熱が下がった時に起きている。
この二つの意見は相矛盾しています。前の引用では、発症初日の昼に異常行動を起こしやすい、と言っています。タミフルは、インフルエンザでは通常発症後3~7日間続く発熱を、2~6日間に短縮する効果があります。とすると、タミフルを投与しても、発症初日には熱は下がっていないはずです。一方、後の引用では、熱が下がった後に異常行動が起きていると言っています。タミフルで発熱が収まるのは発症3日目以降ですから、これは矛盾です。
「タミフルの影響が少なくなるのは、二日目以降」と前の引用にはありますが、早ければその頃には熱は下がっているはずで、後の引用に従えば、むしろ異常行動を起こしやすくなっているはずです。また、いかにタミフルがインフルエンザの特効薬といえども、一回目の服用後数時間以内に熱が下がるわけではありませんから、前の引用の「異常行動は一回目か二回目の服用から数時間以内が最も起きやすい」というのと、「タミフルによる異常行動は、むしろ熱が下がった時に起きている」というのとは矛盾しています。

多分、東京新聞の記者が浜医師の意見を誤解して書いたんでしょうね。

0 件のコメント: