河原で拾った石を地面に擦り付けると白い線が描けたのです。
その軟らかい石を、子供達は
おんじゃく
と呼んでいました。
なぜそう呼ぶかなんて、知りもしませんでしたが、
ついさっき、理由がわかりました。
この石は、おそらく蝋石です。そして、蝋石の主成分は、滑石です。
滑石はモース硬度1の基準となる物質で、
爪で引っかいて傷つけることができるくらい軟らかいのが特徴です。
粉末にして黒板用のチョークや工事現場などでのマーキング用に使われています。
さて、この滑石、別の用途にも使われていました。
それは、懐炉です。
滑石などの石を温めて布で包み、懐に入れて暖をとっていたそうです。
これを、
温石
と書いて、「おんじゃく」と呼んでいました。
この「おんじゃく」だったわけですね。
温石懐炉は、江戸時代まで使われていたそうです。
また、滑石粉末は、ベビーパウダーや化粧品にも使われるそうです。
ベビーパウダーは、滑石とコーンスターチ等の澱粉が主原料、
日本古来の天花粉は、滑石と黄烏瓜の澱粉が主原料だそうです。
禅僧が空腹(や寒さ)をしのぐために温石を懐中に入れたところから、
一時の空腹を凌ぐ料理、という意味で「懐石料理」という言葉ができたそうです。