2007-03-06

【天声人語】2007年03月06日(火曜日)付: 若桑みどりって人は一体…?!

今日の朝日新聞の天声人語、びっくりしました。天正キリシタン少年遣欧使節(1582~1590)が帰国後、キリシタン弾圧に遭い殉教するという悲劇を紹介した上で、次のように書いている
『クアトロ・ラガッツィ——天正少年使節と世界帝国』(集英社)を著して大佛次郎賞を受けた若桑みどりさんは、その中で、4人の悲劇は日本人の悲劇だったと書く。「日本は世界に背を向けて国を閉鎖し、個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由を戦いとった西欧近代世界に致命的な遅れをとったからである」。そして「ジュリアンを閉じ込めた死の穴は、信条の自由の棺であった」とも記す。
この若桑みどりって人は想像力か歴史の知識が欠如しているんじゃなかろうか?


仮に日本が鎖国をしなかったら、日本がどうなったか?おそらくは、他のアジア諸国と同じ運命を辿っただろう。ポルトガルがマラッカを征服したのが1511年。1571年にはフィリピンのほぼ全土がスペインの植民地となった。支那も18世紀には欧州列強の半植民地になっていた。日本がこれらアジア諸国と同じ運命を辿ることになる危険性は非常に高かったのだ。

それに第一、十六世紀末の欧州に「個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由」なんてものがあったのか?フランス革命バスティーユ襲撃が1789年。天正使節団の約200年後だ。しかも、フランス革命はジャコバン派による恐怖政治など、実際には「個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由」なんてものは全く実現されていない時期もあったし、フランスの状況が安定したのは百年以上経った十九世紀初頭のことだ。

これらことから考えても、十六世紀末の欧州諸国と交流することによって「個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由」が得られたかというと非常に疑問だ。植民地化された日本が、宗主国との間で「個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由」を争う独立戦争を行ったかもしれない、という意味では「個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由を戦いとった西欧近代世界」と同じような道を辿ったかもしれない。しかしそれはおそらく、他のアジア諸国が植民地支配を脱出したのと同じ、二十世紀後半以降になったであろうことは想像に難くない。それとて、独立日本が明治政府を樹立し、欧米諸国と肩を並べるまでになった歴史なしには、早すぎる予測と言わざるを得ないのではないか。
若桑みどりは「ジュリアンを閉じ込めた死の穴は、信条の自由の棺であった」と書いたが、1890年に施行された明治憲法では、
第二十八条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
とある。仮に棺に閉じ込められなかったら、信教の自由とやらは何年頃に実現したと若桑みどりは考えているのだろう?

若桑みどりも朝日新聞も、歴史の知識と想像力を自己点検した方が良いだろう。


なんてことを書いた後で、この本を買おうって人がいるんだろうか…

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私の両親も朝日新聞の熱烈支持者なのですが、どう考えても「コレ絶対間違ってる!」って記事が目に付きます。
わざわざお金を払ってこんな新聞を購読しているなんて!・・・と、思ってましたが、最近はネタとして楽しむ余裕が出てきました。(間違った記事に関しては、本来なら読者オとして抗議するべきなのでしょうけどね)
これってある種の「情報操作」のようにも思えるのですけど。どうなのでしょうね?

りょう さんのコメント...

すみません。年度末進行が未だ続いてて返事が遅くなってしまいました。
新聞にもいろいろあって、東京スポーツ(こっちで九州スポーツですが)みたいな煽り記事を売りにしているものもありますよね。なぜ煽り記事を書くかと言えば、その方が売れるから。ジャーナリズムというよりは商業主義なんですね。
じゃあ、朝日新聞をはじめ、他紙はどうなのか、といえば、確かに東スポよりはジャーナリズム寄りではあるんでしょうけど、新聞社も営利企業である以上、商業主義的に煽り記事を書き飛ばすことはあるわけです。そういうもんなんだと思います。
ちなみに、商業主義とまったく関係ない新聞も世の中にはいくつかあります。そういう新聞が信用できるのか、というとそうでもありません。それらの新聞の代表的なものを挙げると、しんぶん赤旗や聖教新聞です。ちょっとだけ朝日新聞の方がマシに見えてきましたね(笑)。